甘い蜜は今日もどこかで
第7章 【愛したい守りたい】
「は?納得出来ません」
仕事モードのジロウは帰りの車内で報告したら案の定お怒りの様子で。
バックミラー越しに合う視線が怖い。
だよね、想定内です。
それでも引き受けちゃった私が一番悪いです。
後部座席で小さくなる私。
「ごめん……私しか出来ない案件だったから……もうコレで終わり、レンカノはしないから、それより、レンカノが終わったらちゃんと吉原さんに言わない?私たちのこと」
「僕にとっては“それより”で片付けられる案件じゃないです、もう付き合ってるのに……僕のなのに」
「ごめんなさい」
駐車場はちょっと死角になってて、一番奥に停めちゃった。
いつもなら手前に停めるのに何でかなって思ったらさっさとシートベルト外して後部座席に乗ってきた。
「え…?」
マヌケな声出してしまったけど、お怒りモードの視線が私を萎縮させ動けなくする。
めっちゃ機嫌悪い時のジロウだ。
年に何回か見たことある。
それが今日だなんて。
「以前にそのクライアントのご家族と会われたんですよね?だから引き受けなければならなかったんでしょ?わかってる、ずっと頭で言い聞かせてる……でも嫌なものは嫌だ、仕事とはいえ、僕以外の男の前で可愛い顔見せて手繋いでそいつだけの椿さんになるんでしょ?」
「ごめん……ごめんってば」
ご家族と会って安心させるだけだから……て言う前に唇を奪われた。
暗い車内で怒りに満ちたロングキス。
抵抗なんて出来ない。
食べられちゃうような熱いキスに腰が砕けそう。
「大丈夫って100回唱えても、嫌だ……無理、もう絶対二度としないで」
「わかった、約束する、ごめんね、ジロウ」
「その日の前後は身体中に印着けて良いですか?」
「ん……消えないくらい着けて」
私の全てはジロウのモノだよ。
仕事とはいえごめんね。
ちゃんと吉原さんに報告出来たらもう堂々とジロウだけの藤堂椿になる。
だから………だから………待ってて。
「家まで待てない、怒りが鎮まるまでキスして?」