甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
ふわふわの髪を撫でてあげる事しか出来ないのかな。
グロス着ける前だからキスもして、正面から抱き締める。
再び離れられない唇。
「20時まで待っとかなきゃダメ?」
今日はお昼の13時から20時までレンカノ。
夜はクライアントのご両親と会食する流れで。
ジロウはいつものように近くで待機してくれている予定なんだけど。
「待ってて、良い子にしてたらご褒美…ね?」
こんな事しか言ってあげれないけど満更でもなさそうなので良かった。
ううん、それで引き下がってくれたんだよね。
めちゃくちゃ不安にさせてる分、今夜も絶対離れないよ。
ちょっと体力保つかどうかわかんないけどたくさん愛してあげる。
車で送ってもらって指定された待ち合わせ場所に着いた。
ジロウももう気付いてると思うけど、仕事モードの顔つきになっている私に精一杯の笑顔で「行ってらっしゃい」って言ってくれた。
帰ったらその笑顔、トロットロにするからね。
「行ってきます」
去り際は潔く。
これ、鉄則。
今まではレンカノの後は私の方が甘えてばかりだった。
余計にジロウの存在が大きくなって、それをハイハイと交してたくせに。
逆の立場になるなんて、あの頃の自分が知ったらびっくりだよね。
全然なびかなくて脈ナシだと思ってたから。
「あ、アキちゃん!」
もうすでに待っていたクライアントの関口さん。
え!?チャラ男じゃなくなってる!
髪も黒くなっててまとまってる。
「待ちましたか?お久しぶりです」
「あっ……いや、早く来ちゃっただけで……その、ありがとう、引き受けてくれて……もうレンカノ受け付けてないって言われて正直焦ったというか、アキちゃんしか頼みたくなかったから」
チャラ男でも根は真面目なのね。
背伸びしてた時期だったのかな。
「前にお母様にお会いしたの強烈に覚えてたので」と茶目っ気ぽく言ってみた。
「ハハハ、強烈だったよね、だいぶ前なのにレンカノのOKが貰えた時は本当に嬉しくて、昨日なかなか寝れなかった」
「大丈夫ですか?デート中に寝ないでくださいね?」
「寝ないよ、楽しみにしてたんだから!」
周りの人がチラチラ見ちゃうほど元気な声。