甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「椿がそう言うならそれで良いけど〜あなた、接客以外にレンタルも入ってきてるのよ?両立出来る?」
嘘でしょ!?
それ、今言う!?
クライアントの前で他のクライアント話はNGだって言ってたくせに!?
うわ、吉原さんの目が楽しんでいる。
こうなればどう足掻いても吉原節は止まらない。
「講義、結婚式参列、デート…」
「吉原専務!も、もう良いです、差し支えのないように致します、抜ける2日前ほどから派遣して頂けるとスムーズに引き継ぎ出来るかと」
「うん、わかった、織部副社長もそれで宜しいですか?」
「は、はい!」
必要書類に目を通し新たな契約を結ぶ。
社長の判子も後に頂いて成立となった。
延長がプラス6ヶ月に決定、その後は3ヶ月ごとの更新。
契約期間内による契約解除は双方の判断により認められる、違約金はなし。
良かった、これでもう少しは副社長に貢献出来そう。
合間に入る別件も納得されたみたいだし。
そう思ってスケジュールを確認したら来月の第2土曜日にレンタル妻が入っていた。
こちらも、お得意様のクライアントだ。
友人の結婚式に夫婦として参列してほしいとのこと。
服装、ヘアメイク、ご友人夫婦、参列される方の情報、どれくらいの規模で行われるのか事前にクライアントと綿密に相談する。
お、おぉ?参列者のほとんどがバイリンガルで主に英会話だと…?
そりゃビジネスに関する英会話くらいなら大丈夫だけど……大丈夫なのか?
まぁ、ご指名ですもんね。
卒なくこなしてみせますよ。
そして、驚くほどに頬を膨らませ拗ねている副社長が。
「やっぱり……行っちゃうんだ?俺以外のところへ」
「あの、変な誤解を招くので社内でそのような会話は慎みましょう」
「今、2人きりだろ」
「副社長はすぐにボロが出ますので」
「藤堂さんに関することだけだ!」
ほら、すぐそうやってムキになる。
お子ちゃまですね。
そんな時に笑顔を与えると少しは怒りが収まるのかしら。
「な、なに……?」
「いえ、ただ………良かったんですよね?延長なされて」
「うん、それ以外はちゃんと俺についてて」
「はい、かしこまりました」と極上スマイルを見せるとようやく表情も和らいだ。