甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「思わないよ」
「だから今はマジで腸が煮えくり返ってるんです、誂わないでください」
「うん、でも今は2人じゃん?ちゃんと言ってよ、1人で抱え込まないで」
「こんな姿本当は見られたくないのに……ハァー、もう椿さんのことになるとガキ過ぎてグダグダっすよ、もう……」
悔しそうにハンドルを叩く。
そういう子供っぽいところも好きなんだけどな。
言うと変な空気になるかもだから言わないけど。
「全部ぶつけて良いよ?私もお構いなしで毎日ぶつけてんだから、2人の仲じゃん?」
「じゃあ、さっき告白されてましたよね?酔っ払ってたけど、アレ、俺が来なかったらどうなってたことか……考えただけで虫酸が走る…」
わぉ、こんなこと言う子なんだ。
珍しく怒りを露わにして、もしかしたら今なら何でも言ってくれるんじゃ!?
いやいや、シラフだから無理か。
「うんうん、ジロウってさ、結構前から私のこと好きだよね?」
「えっ!?」
あら、そういうテイでくるのね。
はっきり言ったらこのザマだもんな。
今まで見逃してきたけど、怒ってるならその理由を考えるべきよね。
自ずと答えは出てくるはずだけど。
ていうかもうキスしちゃってる仲だし。
認めちゃえ、認めちゃえ。
「あっ…いや、えっと、えっ!?」
「驚き過ぎ、もう知ってるから認めちゃいな?じゃなきゃ、ここまでヤキモチ妬かないでしょ?」
「ないないない、ないです、僕が?」
この期に及んでまだそんなこと言うからシートベルトを外した。
運転席の方に向いて乗り上げちゃうぞ。
今更驚くこともないでしょ。
数分に一度、車が通るだけの時間帯。
ハザードをつけたままの車内で私はジロウにキスをした。
というより、無理やり唇を奪った。
何抵抗してるの?
舌絡めたら動かなくなったじゃない。
こういう運命でしょ?私たち。
可愛らしいくらい嫉妬しちゃって嬉しいよ。
でもさ、こんなキスするの、ジロウだけなんだよ。
でも、キス止まりなのはそろそろ限界かな……なんて言ったらジロウ卒倒しそうだからグッと堪えるけど、これマジで拷問だからね?
けどやっぱり、ジロウから行動起こしてくれないと意味ないから。
好きかどうかはこれ以上追求しないでおくね。