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甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】








ネイビーカラーの総レース、Aラインのワンピース。
首回りと七分袖にかけてシースルーデザイン、バックにウエストリボンの膝丈。
同色のヒールとシルバーラメのクラッチバッグ。




後れ毛で抜け感たっぷりのシニヨンヘアでバッチリ決まった私に最後、目立ち過ぎないピアスとネックレスで着飾ると、オプション通り仕上がった。




ギリギリまで流し英会話を聴きながらレンタル妻、サトミの顔に。
新郎新婦は会社の上司だけどレンタル妻してて会ったことない人なんだよね。
海外支社からこっちに帰ってきたんだとか。
だから参列者に外国人が多いわけね。




「あ、椿さん、車用意出来ました」




そして、今回は式も披露宴も規模が大きいのでジロウもホテルスタッフとして潜入する予定だ。
スーツ、似合ってる。
毎日、送迎お疲れさま。
準備が整ったバッチリメイクの私にまだ真っ赤になってくれるの?
頼もしいね。




事務所のスタッフに見送られながら腕を組んだりして終始リラックスムードでクライアントの元へと向かう。
後部座席で物思いにフケながら何度かバックミラー越しにジロウと目が合う。
すぐに逸らすけど見過ぎだから。
惚れるなよ?




待ち合わせ場所に着いて、クライアントの姿を確認したら車を降りる。
その瞬間から完璧なレンタル妻ではなく、本妻サトミになるのだ。
ジロウの元から夫である人の元へ。
手を振って笑顔で腕を組んで歩く。
一切振り返らないし、夫しか見えなくなる。




「き、綺麗過ぎてびっくりだよ」




「エヘヘ、ありがとう、カイトさん」




蝶ネクタイのスーツに身を包んだカイトさんは相模海斗さん、39歳とひと回り以上の年上。
友人の紹介で知り合い、交際期間2年で極秘入籍した設定。
妻のお披露目会に前回ご利用頂いていたので今回も私を指名してきた。




「あの、ほとんど英語で…わかんないとこあったら僕がフォローするから絶対に僕から離れないで」




「うん、ありがとう」




妻、なので全面的に敬語は禁止だが、夫を立てる場面ではさり気なく敬語もアリかな、と思っている。
なんせ、夫が大好きな妻を演じるので。









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