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甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】






「サトミ……サトミ……」
譫言のように呼び捨ての練習してるカイトさんに笑ってしまう。
何だか一瞬、副社長と姿が被ってしまったが脳内から追いやった。
今はクライアントに集中よ。




大きな老舗ホテルにて受付を済まし、夫に着いて挨拶回り。
会場に居る誰よりも若い為に目立つのは仕方ない。
たくさんの視線を感じつつ控えめな妻を演じるけど、挨拶するたびに羨ましがられているカイトさんは終始ご満悦だ。




そして、その横目にホテルスタッフに扮したジロウの姿も確認した。
夫婦である以上、腰に手を回してエスコートされている。
時にはオプションとして耳元で囁やき合ったりくっついたりしている。
照れている夫にまだ恋してる視線。
周りから囃し立てられるような。




オプションとはいえ、私にとってはジロウへの焚き付けなんだけどね。
チラッと見ては何でもない顔をしてるけど、静かに嫉妬させていくのが今回の私の隠れオプションなの。




式には感動したフリ、周りを囲まれて照れるフリ、三歩下がって夫に着いていく妻を完璧に演じている。
中には疑う者も居るだろう。
年の差カップルは女が年下なら相手はロリコンだと言われ、女が年上なら相手はヒモだの言われる。




本当、ウルサイよ。
だからこの時間だけは本物の夫婦であるように、カイトさんだけを見てる。
仲睦まじい夫婦はどのように映ったのか。




「どこでこんな可愛らしい子を見つけてきたんだよ」って言われてカイトさんも英語で答えてる。
そっと私の席にノンアルコールカクテルを持ってきてくれたのはジロウだ。




周りに注目されて気が大きくなったのか少し飲み過ぎた様子のカイトさん。
妻としてセーブさせる。
ジロウを呼んで同じノンアルコールを用意させた。
そしたら、自分以外の男と話さないでと嫉妬されてしまう。




「ごめんなさい」とシルクのハンカチで口元を拭いてあげたら「ラブラブね」と同じテーブル席のご婦人方に言われた。




新郎新婦との写真撮影はSNSには動画もあげないようにお願いしているが大丈夫だろうか。
友人らは顔を隠すって言ってたから徹底してもらうように再度確認した。
奥さんへの独占欲が半端ないってことにしてるからと耳打ちされて照れ笑い。









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