甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
「求め過ぎもダメですよ?まずは同じラインに立って互いを知り合うことから始めてください、人って面白いんですよ?知れば知るほど奥が深くて、自分にはないところ、ダメなところを補い合っていける人かどうか見極めながら寄り添えていけたら良いですね」
「本当に大丈夫かな」
「大丈夫です、私が太鼓判を押します」
「アハハ…!あなたにそう言ってもらえると出来る気がしてきました、ありがとう」
「何だか次も指名して欲しいなんて痴がましいこと言っちゃいましたけど、本当は利用しなくなることが一番なんですよね、それが相模様の一番の幸せですね」
ギュッと握り返してきた手は少し汗ばんでいる。
「もしかしたら、あなたにただ会いたくて指名しちゃうかも知れません……良いですか?」
「フフフ、勿論です、恋愛レクチャーしますよ、なんて……出しゃばってすみません」
「いえ、そうしてください」
やっとクライアントの本物の笑顔を見た気がする。
だとしたら、私もまだまだってとこね。
色々と課題も見えてきた今回の案件だ。
ようやく駅に着いて此処で本日の依頼は終了となる。
車を降りてお見送りした後、ゆっくり停車したジロウの車へ乗り込んだ。
「お疲れさまでした、椿さん」
キリッとしていたホテルマンの顔からいつもの可愛らしい顔に戻っていたジロウに抱き着きたかったがまだポーカーフェイスで。
「ジロウもお疲れさま、メールだけ打っちゃうね」と業務終了の報告を会社に送る。
静かに走り出す車内で、ホテルの制服の上に上着を羽織っているだけだと確認したらちょっとドキドキしてきた。
ヤバい………本当にお持ち帰り!?
バカバカ、今日はダメ。
私、お酒飲んでる、少量だけど。
「あの、コレ、羽織ってください」と大きいストールを渡してくれてキュンとなる。
ダメよ、今日の私はいつもよりチョロい。
このまま流されたら歯止めが効かなくなる。
「お腹すいてません?何か軽食でも作りましょうか?」
「いや、良いよ、ちゃんと食べたから」
「じゃあ、マッサージでも」
「いい」
「…………………」
酔ってる素振りは見せない。