甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
ベランダ見ながら背伸びして携帯を開いた瞬間に思い出した。
「あっ!!副社長に電話っ!!」
時刻はまだ21時過ぎだったからホッとした。
22時以降になるって言っておいて正解だったわね。
うーん、今から掛ける?
それとも時間守る?
後回しにして忘れたくはないから今から掛けようと思った。
出なくても着信は残るだろうし。
ベットに座って気軽に掛けてみる。
掛けてと言われたから掛けるのだ。
2コール目で取っちゃうのは流石に驚いたけど。
__藤堂さん?
「はい、藤堂です、お疲れさまです」
__うん、お疲れさま、今は自宅?
「はい、もうすっかりリラックスしてます」
__アハハ、そうか、ありがとう、電話……覚えててくれて
「忘れちゃうかもって思われてたんですか?秘書なのに?心外ですね、ふふふ」
__あれ、もしかしてお酒飲んでたりする?声が何となくフワフワしてる
真面目に缶ビールを置いて思わず正座してしまった。
「すみません、私ったら」
__アハハ、良いよ、俺も飲んでるから
「副社長は何飲まれてるんですか?」
__ん?俺は……マッカランだよ、藤堂さんは?
マッカランって確か高いウィスキーだよね?
次元が違い過ぎて言いたくないんだけど。
おーい、藤堂さん?って急かさないで。
「お恥ずかしながらコンビニで売っている1本259円の缶ビールです」
__どうして恥ずかしいの?良いじゃない、俺も飲んだりするよ、缶ビール……でも今日は酔いたい気分だからアルコール度数の高いやつで
「じゃ、もう少し遅く掛けてたらお休みされていたかもですね」
__ううん、待ってたよ、全然酔えないんだ
「あまり飲み過ぎないようにしてくださいよ?お家だからって気を緩み過ぎたら…」
__じゃ、藤堂さんがまた明日、電話掛けてきてよ
「え……?」
__毎日でも聴きたい……声………
「あの、本当は今の電話もイレギュラー行為なんですからね?」
__うん、わかってる、藤堂さん困ってるかな?困らせたくて言っちゃいました