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甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】








「行ってらっしゃい、椿さん」




「うん、ありがとう」




毎朝、会社まで送ってくれるジロウの車から降りると何人かのガードマンさんと挨拶を交わし7階の秘書室のある階へ。
もうすでに室長は出社されていていつも2番手が私だ。




「おはようございます」




「おはよう、藤堂さん」




室長の朝一番のこのスマイルはとびきり爽やかだ。
「どうぞ」と淹れてくれるコーヒーがとても美味しいのです。
もはや、このコーヒー目当てだと言っても過言ではないくらい皆さんの出社する30分前が一番好きな時間です。




今日一日のスケジュール確認と来月の会議室の手配準備等の予定を組んでいく。
静かな空間にタイピング音やマウス、印刷音。
時計を見て席を立つ。




「あ、僕も行きますよ」




「はい」





エレベーターのボタンを押して、鏡張りなのでそこで少し身なりを整える。




「綺麗ですよ、確認しなくても」




「え、あ、ありがとうございます」




唐突に言われたので赤らむ頬をパタパタと手で扇いだ。
わざと仰ってるのはわかってる。
だから私も「室長もいつも素敵ですよ」と笑ってみせる。




「また2人だと噂が立つかもって思うだろ?堂々としてれば良い、仕事なんだから」




「はい、堂々としてます」




「コソコソしてる方が怪しいよな?完璧な仕事をこなしてる藤堂さんに羨望の眼差し向けてるんだよ、暇な奴らだな…てくらいに思ってれば良いさ」




「ふふふ、ありがとうございます」




1階フロアに着いて副社長をお出迎えする。
私だけではなく室長も一緒だったので優しい眼差しはお預けです。




室長はこの後の社長のお出迎えも社長秘書と共に行うので私たちは先に上階へ。




「おはよう、椿」




「……おはようございます」




2人きりのエレベーターだからって名前呼びはちょっと……控えて欲しいところだけど。
隣に立つ副社長はゆっくり指を絡めてきて。




「アイツが居たからちゃんとポーカーフェイスしたの?」




「え…?いつも通りだったと思いますけど」




「うん、でも俺見た時優しく微笑んでくれたの、アレめちゃくちゃ嬉しかったんだけど?」




「そ、そうですか」











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