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恋人は社長令嬢

第9章 勇気を出して

「別れたのも一緒よ。彼からはもう2週間も、連絡がないもの。」

「会社では会うんでしょ?」

「……彼ね。北海道へ、転勤になったのよ。」


初めてというくらいに見る、那々香の弱い部分。

あの気の強い姉を、こんなにまで弱くしてしまう相手は、よっぽど素敵な人なんだろう。

「梨々香は、そんな失敗しないようにしなさい。」

「それって、失敗なの?」

「うん。」

「いつまでも秘密にしておくと、一番大事な時に、相手を失う事になるから。」


那々香は、目をつぶっている。

まるで、自分の事を思い出しているかのようだ。


「那々姉が彼氏と別れたのって、それが原因なの?」

「そう。」

「何で言わなかったの?」

那々香は黙って、コップの中の水を見ている。

「それじゃあ、まだ別れてないじゃん。」
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