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第4章 おまじない

温もりが怖い。

貴方を抱く、この温もりが消えてしまう。
やがて貴方は私から離れ、去っていく。

温もりが怖いのです。
貴方の体温をずっと私と同じにしておきたい。

どうすれば、いいですか。

僕は勇気をもって身体を離します。
腰に廻した右手の力を抜きます。

だけど左手に絡ませた貴方の指はそのままに。

僕は目の前に現れた二つのハーフムーンを。
ジッと見つめるのです。

散乱した光の中に僕がいます。
僕をジッと見つめています。

頬を染めて貴方も。
見つめ返してくれているからです。

キス、してもいいですか。

僕のささやきに。
貴方は頷く代わりに目を閉じてくれました。

長いまつ毛のカーブが。
新しい半月を二つ作ります。

ぷっくりした唇が。
少し開いていて。

僕を導いてくれます。

好きです。

その言葉を消すように。
唇が重なります。

永遠の時が刻まれようとしています。
貴方と僕の。

柔らかな感触の中で。
泣きたいほどの恋心が絡み合っていきます。

キス、させてくれました。

腰に廻した右手が貴方を引き寄せ。
左手が貴方の指をギュッとします。

「ふぅ・・・。」

貴方の甘い息が当たります。
僕は嬉しさに叫び出したいくらい。

静かに吸い込んで行きます。

キス、しています。

つい、この間まで。
他人だった二人が。

互いの温もりを感じながら。

もう、怖くありません。
二人の温もりが今、交じり合ったのですから。

(愛しています・・・)

僕の心の中の呟きを。
今、貴方の舌が絡めとっていきました。

(愛しています・・・)

貴方の呟きも。
今、僕が絡めとりました。

貴方と僕の。
永遠の時が刻まれた瞬間です。

キス、したのです。

お休みなさい。
そして。

愛しています。

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