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狂愛の巣窟〜crossing of love〜

第7章 【あなただけのモノになれたら幸せなのです…】








「今回も綺麗になっちゃいましたね」




月1で通っている美容室にてヘアメンテを行う。
鏡越しに目が合う担当美容師に微笑みお礼を言った。
お客様なのでアプローチは控えてくれていますが、最初の第一印象で射抜いていると思います。
関係を持っちゃうと此処へは通えなくなるので今でもちゃんとした距離を保っている。




それに、此処ではちゃんと母の顔も見せている。
娘の有紗もヘアメンテが終わって一緒に会計へ。




「この前、此処からの帰り道でナンパされちゃいました、ありがとうございます」と有紗はちゃっかり担当美容師と仲良くしてる。




「本当、母娘じゃなくて姉妹みたいですね」と美容師に言われるも社交辞令だと軽く受け流す。
ジッと見られているとわかっていますが長年、この距離感は変わりません。
その為に娘も同じ時間に予約してるのですから。




それなのに有紗はそれが面白くないらしく、私の担当美容師に内緒話なんかして。
「あ、理玖くんから電話だ、ママちょっと待ってて」と外に出てしまう。
また何か企んでるんでしょ。
会計も終わり、外までお見送りされる私は「ありがとう」と会釈して背を向けた。




「あの…!」




背中越しに呼び止められて小走りに駆け寄ってくる。
黒髪のゆるふわパーマが似合ってる。
白いTシャツが眩しくて、ハサミを滑らせる指は細くて綺麗。
袖から少し見えるタトゥーがお洒落で格好良いね。
若いな、の一言なんだけど。
真っ赤な顔して来てくれた。




「あの、僕、今度、新しく開店するお店のオーナー任されちゃうんですけど……」




「え、おめでとうございます」




「だから、その、もう此処じゃカット出来なくなるんで……担当から外れます」




「何処ですか?」




「え…?」




「何処のお店になるんですか?」




「えっと、○○の駅前に7月オープン予定です」




遠いですよね?って言うそばから「行きます」と答えたから豆鉄砲を食らったみたいにびっくりしててウケる。
車でなら行ける距離だし。




「そしたら担当変わらないですよね?」




「は、はい!」




無邪気な子供みたく笑うのね。
私より10個ほど下だろうから可愛く見える。








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