狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第7章 【あなただけのモノになれたら幸せなのです…】
こちらに嫁いで来てからずっと担当してくれている美容師、浅間ケンジさん。
改めて歳を聞くと32歳でスタイリスト歴は10年だった。
めちゃくちゃ年下だと思っていたのに意外でした。
双方の予定など知らんぷりでくっつけようとしたがる娘にメッと叱りつつ、隠れ家的なレストランを予約してくださいました。
出て来るコース料理はどれも美味しい。
無理させてるんじゃないかしら、と心配にもなる。
有紗との分は出させて欲しいけどきっと断るだろうな。
どうしよう、お酒も勧められてシャンパン頼まれたけど私は全然酔えなくて彼だけが真っ赤だ。
わからないようにお水も頼んであげた。
食べるだけ食べてとっとと帰ろうとする有紗を引き止める。
「え〜理玖くんに迎えに来てもらうから」
「2人きりにしないでよ」と小声で反論。
ニヤニヤしてんじゃないわよ。
本当、そんなんじゃないから。
私も亨さんを呼べば良い?
「ケンジくん、ママ送ってあげてね」って有紗が言ってるけど、送られる側なのでは!?
目が据わってない?
レストラン出るまではちゃんと歩けてたけど、少し風に当たった方が良いみたい。
公園のベンチに座らせ、自販機でスポーツドリンクを買って飲ませる。
「すみません…」と項垂れているけど別に何とも思わないよ?
頑張ってくれた分嬉しいから。
なんて、余裕見せて介抱してたけれど。
吐いちゃったんだよね、彼。
そんな飲んでたかな?
お酒、弱かったんですね。
ハンカチ渡したけど間に合うかな。
背中を擦ったら「汚いんで離れてください」とか気遣わなくて良いから。
あなたぐらいの子をどれだけ面倒見てきたと思ってるの。
少し落ち着いたら汚したところをある程度片付けて手洗いした後ベンチで膝枕してあげた。
有紗に事情を説明し、遅くなることをメールで伝える。
ほんの1時間くらい経ったらムクッと起き上がりひたすら謝られ苦笑い。
「それより大丈夫?吐いたらスッキリしたみたいだね?良かった」
「浮かれて許容値越えてるの気付かないでとんでもないご迷惑を……すみません」
「お酒、弱ければ最初に教えてくださいね?浅間さん」
「あ……名前」