狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第8章 【戻れないのなら一緒に乗り越えてください…】
「私の思い過ごしかも知れないってドキドキ感返してくれる?」
「あの、その……えぇ?」
「アハハ…!面白い顔してるよ、ウケる」
「いや、ごめんなさい……あれ、何で謝ってんだ?」
「ちゃんと聞くよ、だから言って?」
掌を返して汗びっしょりな手を握り返してあげたら目が真剣になった。
「軽いって思われるかも知れないですけど、一目惚れしました、結婚してるって知らなくてずっと片思いしてました……好きです、来てくれた時、本気で奇跡だと勝手に勘違いしました、すみません」
言い終えた時にはもう手を引いて唇を重ねてた。
ほんの一瞬だけのキス。
「あぁ、ごめん、止められなかった……同じ思いしてたんだってわかったらズルい自分になっちゃった」
“同じ思い”ってところに引っ掛かってくれたかな。
レールは敷いたよ。
来るか来ないかは自分で決めてね。
ズルい私だけどってのも最初に伝えたからね。
「僕も、止まらないです」
ほら、食らいついた。
キミからキス、終わらせなかったよ?
自覚しててね。
自分の意思で舌絡ませてきたんだからね。
シートの間にあるアームレストも退けてくっついた。
がっつくくせに優しいキス。
何度も何度も角度を変えてキスを味わう。
何分経ったのかしら。
離れてはまた重なって、を繰り返し経験値の浅い彼に本気のキスを教えてしまった。
トロンとした目で私を見てる。
欲しがってる目。
ダメだよ、と制止する。
おしまい、とシートベルトに手を掛けたらその手を止めてきて彼からもキスしてきた。
もう待てない、のキス。
余裕なんてほぼない。
首筋から後頭部に手を這わせ舌を絡めて。
終われないね………もっと欲しくなるね。
まだ会って2回目なのに。
「航平くん、もうダメ……これ以上は」
「は……はい、すみません」
「謝らないで」
「あと、1回だけ………」
「んん……っ」
車の中………てのがもどかしい。
此処がホテルなら、
彼の家なら、間違いなく一線を越えてるだろう。
まだ早いね。
まだその段階ではない。
順番なんて在って無いようなものだけど。