狂愛の巣窟〜crossing of love〜
第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】
ジリジリとまた、暑い夏がやって来る。
疼く身体は今も尚、火照りが収まらなくて彷徨い続けてる。
「あっあっあっ……十和子さん…っ」
「んふふ、イっちゃった?」
ベッドから降りて床に落ちてる下着を身に着ける。
2回目は、ない。
帰ろうとする私を後ろから引き寄せて唇を奪う。
「もう時間ないですか…?」
「ごめんね、もう行かないと」
「はい……」
「……和泉くん?」
「まだ離れたくないです」
「ごめん、時間ない」
「あっ……」
腕を振り払い、笑顔で去って行く。
相手が強く出れないのも見越してのズルい戦略。
嫌なら来ないよ?
でもない時間作って会いに来たの。
わかるでしょ?
(次会う時までお利口さんにしててね)
ヤリスクロスのエンジンをかけながら定型文を送る。
窓から見てるの?
車で去って行くところ。
--目的地に到着しました--
カーナビに映し出されている場所に停めてお店に入っていく。
開店祝い花で一杯の店内。
「いらっしゃいませ、佐倉様」と出迎えてくださったのはオーナーに昇進した美容師の浅間ケンジさん。
「来てもらえないかと思ってました」って何だか泣きそう。
「開店おめでとうございます、やっぱり浅間さんにスタイリングして欲しくて」
「お任せください」
ニッコリ笑って席へ案内される。
顔周りにレイヤーを入れてもらい、アレンジもしやくしてもらいました。
いつも綺麗にしてくれてありがとう。
タイトなスカートのセットアップだった私に他のスタイリストさんも目で追っているのがわかる。
終わってお会計する際に。
「あの、ホームページに載せても良いですか?勿論、お顔は映しませんのでヘアスタイルだけ……お時間あれば、ですけど、急にすみません」
あまりにも早口で焦ってらしたので笑ってしまいました。
勿論、快諾してお店の外で写真を撮られます。
ジッと彼を見つめたままだから撮り終わってもお互い言葉もなく。
「終わりました?」
「……あ、はい!ありがとうございます」
お店の外だし勇気もないわよね。
顔が見れただけで良かった。
ヤリスクロスに乗ろうとしたら「あの!」と近付いて来て私も止まる。