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もうLOVEっ! ハニー!

第20章 秘密のシャーベット


 日曜の午前十一時、食堂では奇妙な緊張が漂っていました。
 カウンターに並んだのは、右から私、ガク先輩、ルカさん、そしてアンナさん。

 汐里がクロックムッシュをオーブンから取り出すと、朝にはなかなかジューシーなチーズの香りが満ちる。
「一応ですね、昨夜話しました通り、オーディション枠には入れてもらえるとのことで、まず最初に現場見学兼ねて挨拶に行くわけですが。何枚か試し撮りもしてもらえるようです。それで、モデルのお仕事って他人だけでなく近しい人からの意見も大事なんですよね」
「私とルカちゃんとかね」
「黙ってて、アンナ。それで、松ちゃんにも同行してもらおうと思いましてね」
 食欲が行方不明です。
 だってこのカウンターに並ぶ他の人たちは全員、今日カメラの前に立つわけですよ。
 フォークとナイフで綺麗に切り分け、無言で食べ終えた岳斗がルカの方を向く。
 今日はいつもより髪のセットが固めに見えるんですよね。
 白Tに黒のロングカーディガンも似合ってます。
「彼女の目の前は恥ずすぎん?」
「だから予行演習したじゃないですか」
 前回撮った写真を画面に出したルカに、返す言葉もない。
「あのねえ、色男。ルカちゃんなんていつだって、私の前であられもない表情とポーズをしてるのよ。ねー?」
「アンナ、口縫いましょうか」
「いやよ。深いとこまで触れ合えなくなるじゃない」
 するっと胸元に手を絡ませようとしたアンナの手を、捻るように掴み上げる。
「食事の場で暴れるんじゃないよ、嬢ちゃんたち」
 流石に見てられないとばかりに、厨房から声を掛ける汐里に、ルカも手を離した。
「前にも言いましたが、天性のものがあるんですから最大限に活用してください。すごく楽しみだったんです、今日が」
 キラキラと。
 音が聞こえるような瞳で。
「ハードル上げんでね。会場まではなにで行くん?」
「マネージャーがもうすぐ着くので、車でみんなで行きましょう」
「マネージャーついてるんですか!」
 つい言葉を挟んでしまいました。
「滅多に送迎はないんですがね。今回は人数も倍なので、お願いしました」
 バスケ大会を思い出しますね。
 あの時もルカさんと一緒だった。
 今日は、長い一日になりそう。

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