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もうLOVEっ! ハニー!

第20章 秘密のシャーベット


「気をつけて行ってらっしゃい」
 見送りに出てきた隆人が小さく手を振る。
 二学期に入ってから、だいぶ痩せたように見える。
 病院に毎週顔を出しているとこばるが言っていた。
 その心労は計り知れない。

 門を抜けて、最寄りのコンビニに止まったハイエースにルカが先導する。
 助手席の窓が開き、運転手が顔を出した。
「どうもねー。マネージャーの小脇です。今日は慣れないと思うけどリラックスしてよろしく」
 薄いオレンジのサングラスをかけた、四十歳前後の女性。
 酒焼けしたような声が妙に似合ってる。
 長い茶髪をポニーテールにして、トランプ柄の派手なブラウスにジーンズ。
 ぺこりと会釈してから、ルカに手招かれてハーブの香りがする車内に乗り込んだ。
「派手でしょ。こわきん」
 岳斗の背中を押しながら、アンナが囁く。
「マネージャーて私服なんやね」
「小脇さんは昔モデルもしてましたからね」
 ルカの言葉に小脇が豪快に笑う。
 サングラス越しの瞳は確かな美しい輝きの二重。
「ルカちゃんから提案があるなんてねー。全員シートベルト閉めた? ちょっと、写真で見るよりイケてるじゃんね、青年君」
 二列目にアンナと並んだ岳斗が苦笑する。
「今日はお世話になります。錦岳斗です」
 わ。
 敬語、珍しい。
「ひゅー。礼儀も正しくてよきよき。今日のカメラマン咎さんだからさー。結構戸惑うと思うけど、言われた通りにポーズ取ることだけ集中してねー。ねー、その耳いくつピアス開けてんの? 何号? シルバーが好きなんだ」
「こわきん、マシンガントークやめて」
 アンナがどうどうと運転席シートを叩く。
 ルカと三列目からそれを見て笑う。
「えっと、どれから答えよかな。両耳で八つ」
「八つ! じゃあ手入れも大変だ」
「埋まりかけも二つですけど」
「この道来るなら、それ以上増やさん方がいいよー。耳もよく見られるからね」
 国道を気持ちよく駆けていく。
 小脇のトークは本当に止まらなかった。
「着いたらあたしが挨拶回り連れてくから。二人は先にメイクしといてね。楽しみだなあ。あ、連絡先は交換しないでね。小脇通してって言って」
「ガク先輩の見かけなら変なの寄ってこないと思いますけどね」
「わからんよールカ。いい人の顔した蛇がいーっぱいいるからね。君ら二人守るのも茨道だったし」
 知らない世界の話がひゅんひゅんと。

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