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もうLOVEっ! ハニー!

第20章 秘密のシャーベット


 小脇が挨拶に同行するのを見送ると、すぐに現場監督のような男が声を上げた。
「本日特集一部撮影終了です! エミさん、ハヤさん、ルカさん、アンナさんありがとうございました!」
 スタッフ一同が合唱のように挨拶する。
「それではメンズオーディション撮影始めます。最初に参加者の紹介をしますので、ライトの下に並んでください」
 そのスポットライトの下は、あまりに眩しかった。
 身長は様々ですが、皆さん目を見張る存在感。
 左から三番目、安心する笑顔。
 誰より輝いています。
 それにしても全員十代なのでしょうか。
 流行りのウルフヘア、マッシュルーム、ツーブロックにセンター分けまで髪型も様々。
「はい、それじゃ一番の湊くんからどうぞ」
 咎の言葉で紹介が始まる。
 緊張がにじむ声もあれば、現場を制するようなよく通る声も。
 地方はわからないけれど訛りも二人いた。
「今ほど撮影されたルカさんからスカウトいただきました、錦岳斗です。高校三年、京都生まれ大阪育ちです。よろしくお願いします」
 
 挨拶が終わるとあっという間に一人目の撮影が始まった。
 さっきの二人に比べると、指示が伝わるまで時間がかかるものの、本来の存在感がカバーしている。
 次の次、次、と順番を数えているとルカが声をかけた。
「松ちゃん、よく見ていてくださいね」
「はい」
 ライトの下に戻ってきた顔は、試合の時の顔だった。
「どしたのー、すごい男前な顔隠してたね。じゃあまずこっち向いて、片手耳に添えて。目線はこっちのまま、クールでよろしい。左のライト向いて、そうそう、飲み込み早い。口角上げて、その笑顔はアジア一の兵器だねえ」
 シャッター音と咎の声が音楽に負けじと響く。
 足元がさっきから冷気に包まれているのは、興奮のせいでしょうか。
 あまりに遠く見えるカメラのせいでしょうか。
 持っていないものを沢山見せられたからでしょうか。
「……眩しすぎます」
 呟いた声は、ルカには届いたかもしれない。
 なんだか涙が出そうになってくる。
 あそこに立つのが自分ごときの彼氏なんて。
 神様だって首を傾げているはず。
 撮影が終わるまでが永遠に感じる。
 ああ、どうして。
 ついてきてしまったんだろう。
「ルカさん、凄いですね。先輩」
「圧倒的ですよ。羨ましい」
 それは心からの賞賛。

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