テキストサイズ

もうLOVEっ! ハニー!

第4章 暴露ゲーム開始

「良くはないです」
 床に目を落として答える。
 ここで嘘を吐けるほど私は強くありません。
「じゃあ……さ。楽しいところ行かない?」
「え」
 見上げた陸さんが手を差しのべた。
「気分転換に」

 二十分後、私と陸さんは学園の玄関で靴を脱いでいた。
「春休み中でも入れるんですね」
「玄関から入れる日は少ないけどね。女の子に塀を登らせる訳にはいかないだろ」
 意味ありげに付け加えて陸は慣れた足取りで校舎の中を案内した。
 入学式まであと三日。
 授業で必要な場所から禁止区域までいろいろ教えてもらった。
「基本うちの学園は緩いからさ、悪い奴も大量にいるんだよ。ほら。こばるも派手な頭してっけど、虹かよみたいな色の奴もいるし、ピアスで耳たぶが見えないようなのもいる。大抵は見かけだけだけど、あるグループは覚醒剤に手出してる噂もあるから関わんない方が良い」
「覚醒剤?」
 つい高い声で尋ね返した。
 階段を指さして二階に促しながら陸が話を続ける。
「うん、まあね。学園内に売人がいるってこばるから聞いたことがあるんだ。どこまで本当かわかんないけど。ここは小さな社会って感じでさ。家族とか友人と離縁した奴等が集まってるわけじゃん」
 私達も含めて、ですね。
「つまり必然的に密な繋がりも生まれれば良くない連中も必要とされてくる。隆にいから聞いたと思うけど、行動は美弥かこばるか奈己と一緒にした方が良い。俺って言いたいけど、あんま頼りになんねえんだよね」
 二階の廊下を足音を立てながら歩く。
 白い壁は寮のそれに比べて潔癖すぎて、なんだか病院にいる気がした。
「一年のときはよくこばるに助けてもらったくらいでさ。あいつの弟はわかんないけど、あいつは良いやつだ」
「……そう、ですか」
 曇った声色に気づいた陸が振り返る。
「ご機嫌いかが?」
「……まだダメです」
「もうすぐ着くからね~」
 繋いだ手が、ほんのり温かく感じた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ