テキストサイズ

幸せな報復

第3章 田所恵美の通学

 そのとき、車両は門前仲町駅に到着した。周囲の乗客がゾロゾロ降り始めた。その流れに押されて彼女も背中を押されドアから出されていく。彼女はホームに押し出されていく男の背中を見ながら彼女が叫んだ。
「どうしてなの? どうして?」
 彼女は初めて声に出した。彼女はどうして男が握った手を離したのか訳を聞いてみたかった。
「許さない…… あたしをこんなにして」
 彼女の鋭い目は男を探していた。真面目で勤勉だった彼女の心に別人格が誕生していた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ