幸せな報復
第7章 恵美の覚醒
彼女は心中で叫んだが自分がむなしく思った。そうは言っても、先ほどまで電車内で中年の男性から散々体をなで回される感触を愛おしむように思い起こしていた。そんな些細なことだけでも自分の体の芯が上気した。とにかく、自分の体があの男性を受け入れたい、と思っていることは間違いなかった。その男性の容姿、体臭、行動を彼女の体が好意的に受け入れた。つまり、だれでもいいわけではなく彼だけに触れられたい、と欲求するのだ。今しがた触られた感触を思い起こすだけで心が歓喜してしまう。こんな衝撃は初めてだった。同級生ではなくて年の離れた中年の男性に好意を抱くなんて自分の思考が信じられなかった。意味もなく理由もなく、あの会ったばかりの男性が好きになっていた。ヒトメボレと言うのだろうか、と彼女は自問した。
「あたし、これからどうしたらいいの?」
彼女は自分に起きた現実に立っていられないくらい疲れた。彼女は登校することを忘れホームのベンチに座ていた。
「あたし、これからどうしたらいいの?」
彼女は自分に起きた現実に立っていられないくらい疲れた。彼女は登校することを忘れホームのベンチに座ていた。