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幸せな報復

第15章 接近する恵美

 けだもの族がどれほどの邪悪な悪行を行ってきたかを明らかにしよう。通常、「けもの族」の基本となるグループはオス1匹に対し、メスが数匹従うというグループを単位としていた。オス1匹がグループ内のメス数匹の頭として統率した。これを仮にハーレムと呼ぶ。オスはハーレム内のメスたちの安全を守ることが仕事であり、外界の敵が出現すれば身を捨てて撃退する。それがオスとしての使命だ。当然、何度も外界のオスがハーレムを奪うため一騎打ちを挑んでくる。グループのオスは外界のオスと戦って負ければリーダーの座を奪われる。メスは強いリーダーに寝返り、いつものように狩ってきた獲物を新リーダーに献上し寵愛を受けハーレムを維持していく。
 負けたオスはハーレムから追われる。敗者はハーレムを出て死に場所を探す旅に出る。新たなハーレムを求めようとはしない。既にオスは完膚なきまでに心も体も疵を負っている。さらに、食料とする獲物は今までメスが集めてきたのだからこのオスに獲物を捕獲する能力はない。ハーレムを追われたオスは腹を空かせて野垂れ死ぬしかない。オスはいつしか墓場を求めさまよう。やがて、オスは力尽き永遠の眠りにつく。横たわりながら周囲を見回すと周囲に動物が集まって彼の旅立ちを見守ってくれていることに気が付く。その動物たちはオスが目を閉じると力の強い順にオスの屍を食らうのである。オスは他の動物たちの食料となり体と魂は動物たちの体内に取り込まれ循環されていく。
 一方、ハーレムでリーダーの座を獲得したオスは以前からハーレムのリーダーであったかのように気に入ったメスと交尾し子どもを産ませ子孫をつないでいく。けもの界はその繰り返しである。
 ところが、けものを上回る邪悪なけだもの族は違った。けだもの族の生態系はメスが実権を握っていた。オスは生まれた直後、間引かれた。メスが絶対的支配する世界を作っていた。
 けだもの族はメス5匹でグループを構成した。メスは繁殖期になると他部族の1匹のオスを外界から拉致し出産するために監禁した。グループを構成するメス5匹は、体力があり、心は従順で支配されることを好むオス1匹を外界から選抜し種付け奴隷として拘束する。

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