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雨とピアノとノクターン

第1章 出会い編:金髪の野良猫

…仕方がないか。
 
 僕は倒れている彼の腕を自分の肩に担いだ。ひきずるようにして、タクシーを拾った。

…僕は、何をやっているんだろう。

 タクシーが自宅に着くと、『シートを泥で汚してしまったから』と運転手にチップを渡した。運転手は乗車するときは嫌そうな顔をしていたけれど、チップだけで態度がガラリと変わった。
 厄介事は避けて通る自分が、自ら厄介事を拾い込んでいるなんて。
今日の僕は、どうかしていた。

 なんとか意識がありそうな、金髪でダメな野良猫。
 いや…帰る場所があるのなら、「野良」とは言わないか。
 僕は彼の泥だらけの制服を脱がせると、ソイツを家に上げた。

 裸にして、タオルで包んでやった。
本来なら、バスタブに突っ込んでジャブジャブと頭から洗ってやりたいところだけれど…さすがにそこまで面倒をみる気力がない。
 酔っ払いの前でピアノを弾くって、意外と辛い労働でもあるんだから…。
 見える部分だけ傷の手当てをしてやった。あとは…
 あとは…勝手に目覚めて、雨が上がれば、すぐに出ていってくれるだろう。
 そう思いつつ、僕は一人、シャワーを浴び、出てくると深夜テレビを見ながら、うとうとと眠ってしまっていた…。

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