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ふざけた奴等

第2章 慣れと飽きの境


「何て言えば良いかな。やっぱ、直接見てもらうしかないと思うんだよね」
 早雪は独り言のようにそう言うと、俺らに幼い手を伸ばした。
 また視界が変になる。
 眼球をザクザクと切り刻まれていくように。
 痛みもなにも感覚を伴わないから浮遊感に襲われて気持ち悪い。
「またなにしてっ」
「知念においで?」
 ふっくらしたピンクの唇が動くと、引きずり込まれるように闇に落ちていった。
 強制過ぎじゃね。

「これはこれは、早雪様。お帰りなさいませ」
「なんか異常はあった?」
「そうでございますね、西港で暴動が」
「また?」
「早く彼らを向かわせないと」
「あ、金さんに会いたがってる人いるよ」
「先ほど御目に入れましたが、あれは」
「本物」
「……まさか」
 なんだ。
 あのガキと爺の声がゆらゆらと鼓膜に漂ってくる。
 妙に重い瞼をこじ開けて、瞬きを繰り返す。
 暖かい木の天井。
 灯りが揺れている。
 痛む頭を押さえながら起き上がると、早雪が気づいてトコトコ近づいてきた。
「名倉兄ちゃん、おはよう。早速だけど西港で暴れてる兄ちゃんを止めに行ってもらいたいんだけど」
「寝起き早々なんの話だよ。あとここどこだ?」
「僕の家。あと、こっちが金さん」
「え、金さんなんでいんの」
 そこにいるのは確かに竜也の屋敷で見た執事の金次さんだった。
 だけど、なんか違う。
 根拠はない違和感。
「こたろんとりーやんは?」
「高松兄ちゃんは食事。笠羽兄ちゃんはまだ寝てるよ」
 辺りを見渡すと、ベッドと棚だけのシンプルな六畳ほどの部屋だった。
 床に足をついて、壁に近づく。
 そっと触れてみる。
 何を期待したわけでもないが、普通の漆喰の材質だった。
「西港でなにしろって?」
「もう一人の名倉兄ちゃんを止めてほしい」
 壁についていた手が落ちる。
 ここに来て何度目の反応か覚えてない。
「は?」
 それしか言えなかった。

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