
碧と朝陽
第21章 あお(猫カフェの場面に戻ります)
「朝陽?」
そう呼びかけられ、俺ははっとする。
「あ、ごめん、ちょっと昔のこと考えてた。」
「そっか」
碧は優しくそう言うとそれ以上は聞いてこなかった。
郁人との話はいつかしなくてはいけない。そうは思っているが、なかなか踏み出すことができない。
重い話だし、俺に幻滅した碧に距離を置かれてしまうかもしれない。
「あ、可愛い!この子はなんて名前なんですか?」
気を逸らそうと、白い毛並みの猫の名前を店員さんに尋ねた。
「あぁ、その子はあおちゃんって言うんです」
「あお?」
白い毛並みなのに何故だろう。
「ふふ、白いのになんで?って顔ですね。
この子白くて長い毛が特徴的でしょう?もこもこの雲みたいに見えて、青い空に浮かんでそうだなと思ったから、あおって名付けたんです」
ありきたりな名前じゃつまらないでしょ?と店員さんは笑った。
「素敵な名前ですね」
俺はそう応え、あおちゃんを抱き上げて膝に乗せる。
「あおちゃん、良い名前もらってよかったね、可愛いね」
そうあおちゃんに語りかける。
「あ、朝陽……なんか恥ずい……」
隣で聞いていた碧がなんだがモゾモゾと居心地悪そうにしている。
「あぁ、名前同じだもんな、くくっ、あおちゃん」
揶揄うように言うと、もー!!!と碧が俺の肩を軽く叩いた。
穏やかで楽しい時間だった。ずっと2人でこんなふうに時間を過ごせればいいなと本気でそう思った。
