
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第2章 旧市街地の戦い
「奥さん!娘さんたちと建物の中へ!」
機体の外部スピーカーから声が出る
声の主はまだ幼い
少年兵のようだ
おそらく先鋭部隊は前線へ向かい、経験の少ない新兵が後方支援にまわされているのかもしれない
爆発音はそれから何度も聞こえてくる
逃げ惑っていても安全な場所は無いだろう
「……逃げても、ここにはレンガ造りの旧市街なのよッ!衝撃に耐えられないわッ!」
アリッサは両腕を広げてアピールする
少しの間があった後、ジムⅢのパイロットが告げる
「…では向こうに放置されているバスの中へ!早くッ!」
アリッサと10人の娘たちは駆け出した
全員がバスに乗り込んだのを確認するとジムⅢは立ち上がる
「皆さんしっかり捕まっていて下さいッ!」
巨大なモビルスーツは足元のバスをゆっくり持ち上げると歩き出した
「旧市街地から離れます、島の陸橋まで来たら降ろします!走って下さい」
アリッサは窓から頭を出す
「ありがとう、あなたのお名前は?」
「コートガード隊のラーズ・ローズ!
連邦のブルガリア駐在軍です!
我々のエリアにトルコの企業連合トランキュリティの一派〈ゼントリックス軍〉が侵攻しているのです
彼らはこの黒海を新兵器の実験場にしようとしていますッ!
当分ここは危険な状態ですので、ご旅行でしたら早急に退避を!」
バスを持ったジムⅢは旧市街地を抜け切り、本土へ続く陸橋までたどり着いた
その間にも背後からは戦闘の音が聞こえている
ラーズ・ローズが危険な戦場から連れ出してくれたものの、まだ危険が去ったわけではない
