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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第2章 旧市街地の戦い


母親のアリッサが双眼鏡をバッグから取り出し、海上の巨大物体を確認する


「ミュージカルを観に行く為のオペラグラスがこんなときにも役に立つのは皮肉ね…
 あの機体…、なんでしょう?
 飛行戦艦のようにも見えるけどガルダタイプでは無いようね……」


両翼を広げた巨大な輸送母艦ガルダタイプのようなずんぐりとした形状ではない


細長いシャープなシルエット


「あんなのでよく空を飛べるわね…
 ミノフスキークラフトかしら…」


独りで話しを進めていくアリッサがふと気付いた


こんな時、娘たちは口々に同調するかのような会話をするはずだが不気味なほど静かだ


「……あなたたち…?どうしたの?」



10人の娘たちは全員海の方向を凝視しながら、無表情に全身を固くしているのだ


「……なに?どういうこと?あなたたち何を感じ取っているの?」



アリッサが動揺していると地上側から突風が抜ける


「ベース・ジャバーッ!?連邦軍だわッ!」


アリッサたちの頭上を数十機の編隊が通り抜けていく


運搬飛行機ベース・ジャバーがモビルスーツを乗せて駆けつけたのだ


地元に駐在する沿岸警備隊だ


モビルスーツは量産型のジムⅢだ


数機が地上に降り立ち、数機は上空で編隊を継続している


「ここは戦場になるわッ!あなたたちしっかりしなさいッ!逃げるわよッ!」


アリッサは皆の身体を揺さぶる



「……お母さま……」


「話しは後で!さぁ行くわよ」


アリッサと10人の娘たちは海岸線の遺跡から足早に立ち去った


すでに旧市街地には観光客の姿もなく、街は無人だった


すでにサイレンも鳴り止み、街は廃墟のようだ


当然ホテルのハイヤーの姿もない


総勢11名のアリッサたちに移動手段が無かった


立ち尽くすアリッサの耳には近くで爆発音が届いた


戦闘が始まった!


足のピンヒールに衝撃の振動が伝わる


熱い空気が旧市街の古いレンガの建物から襲ってくる


〈駄目だッ!焼けてしまうッ!〉



アリッサがとっさに頭を守る


だが


思ったような熱風は届かなかった



アリッサが眼を開けると正面に巨大な人のような指


〈モビルスーツの腕ッ!?〉


振り返ると連邦軍のモビルスーツ、ジムⅢが腕を伸ばして熱風から守ってくれていた

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