メダイユ国物語
第4章 非情な実験
1
(おかしい――)
侍女のファニータは、翌朝になっても戻って来なかった。
パウラに留守を任せて私室を出ると、マレーナはエレベーターの前で見張りに立つ兵士を問い詰めた。だが彼は「私は何も存じ上げておりません」と答えるのみで埒(らち)が明かなかい。フロア内で目に付くほかの兵士も同様だった。
(ファニータ、どこへ行ったの……)
マレーナにとって十七歳のファニータは、歳が近いこともあり、三人の侍女たちの中でも特に仲の良い存在だった。姉のように慕っていたグレンナに続き、親友とも言えるファニータまでいなくなってしまったら――マレーナは気が気ではなかった。
さらに丸一日が経過したが、ファニータは戻って来ない。業を煮やしたマレーナは見張りの兵士へ、オズベリヒに会わせるよう依頼した。話は彼に伝わったようだが、オズベリヒの方からは日時の指定がされた。二日後に会うことになった。マレーナは一刻も早くファニータの行方を彼に訊きたかったが、囚われている立場ではこちらの希望を無理強いするわけにもいかない。そもそもファニータの行方不明について、彼が無関係である可能性もゼロではない。今は従うしかなかった。
オズベリヒとの会見の日が訪れた。その日の午後、迎えの従者がマレーナの私室にやってきた。王女は当然のように、侍女のパウラを連れて行こうとしたが、使いの者はそれを拒否した。
「オズベリヒ様からは、姫様おひとりをお連れするように言われています」
彼はそう言った。
何か理由があるのだろうか――マレーナは思ったが、今はすぐにでもオズベリヒに会い、ファニータのことを訊きたかった。背に腹は代えられない。
「分かりました。パウラ、あなたはここで待ってなさい」
オズベリヒの使いに答えると、マレーナはパウラに留守を命じた。
「はい、マレーナ様……」
不安そうな顔を向けながら、パウラは部屋を後にする王女を見送った。
(おかしい――)
侍女のファニータは、翌朝になっても戻って来なかった。
パウラに留守を任せて私室を出ると、マレーナはエレベーターの前で見張りに立つ兵士を問い詰めた。だが彼は「私は何も存じ上げておりません」と答えるのみで埒(らち)が明かなかい。フロア内で目に付くほかの兵士も同様だった。
(ファニータ、どこへ行ったの……)
マレーナにとって十七歳のファニータは、歳が近いこともあり、三人の侍女たちの中でも特に仲の良い存在だった。姉のように慕っていたグレンナに続き、親友とも言えるファニータまでいなくなってしまったら――マレーナは気が気ではなかった。
さらに丸一日が経過したが、ファニータは戻って来ない。業を煮やしたマレーナは見張りの兵士へ、オズベリヒに会わせるよう依頼した。話は彼に伝わったようだが、オズベリヒの方からは日時の指定がされた。二日後に会うことになった。マレーナは一刻も早くファニータの行方を彼に訊きたかったが、囚われている立場ではこちらの希望を無理強いするわけにもいかない。そもそもファニータの行方不明について、彼が無関係である可能性もゼロではない。今は従うしかなかった。
オズベリヒとの会見の日が訪れた。その日の午後、迎えの従者がマレーナの私室にやってきた。王女は当然のように、侍女のパウラを連れて行こうとしたが、使いの者はそれを拒否した。
「オズベリヒ様からは、姫様おひとりをお連れするように言われています」
彼はそう言った。
何か理由があるのだろうか――マレーナは思ったが、今はすぐにでもオズベリヒに会い、ファニータのことを訊きたかった。背に腹は代えられない。
「分かりました。パウラ、あなたはここで待ってなさい」
オズベリヒの使いに答えると、マレーナはパウラに留守を命じた。
「はい、マレーナ様……」
不安そうな顔を向けながら、パウラは部屋を後にする王女を見送った。