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メダイユ国物語

第6章 小さな慰み者

 二十歳だったグレンナ、そして十七歳のファニータは、確かに時おり身体の不調を訴えることがあった。

 では、最年少のパウラはどうだったか……。彼女は常に元気いっぱいに働き、年上の侍女たちが生理による体調不良に見舞われた時も、率先して代わりを務めていた。

(ひょっとしてあの子……まだないのでは)

 十二歳にもなれば、初めての月経――つまり初潮はとっくに迎えていてもいい年頃のはずである。だが、同年代のほかの少女と比べても小柄なパウラは明らかに発育が遅く、マレーナの想像する通り、彼女の身体はまだ生理を迎えていなかった。

(もしそうなら、あのような行為が続いても、当面は妊娠するようなことはないはず)

 マレーナは僅かながら、気が休まる思いがした。が、その直後、
(わたしったら、なんて勝手なことを……)

 と、自虐する。
 本来であれば、身近にいる少女が初潮を迎え、大人の第一歩を踏み出すことは、本来であれば喜ぶべきことのはずなのである。

(早く、こんな事態を何とかしなければ)

 ふと、マレーナは窓の外に目を向けた。漆黒の夜空に、蒼白く輝く月が浮かんでいる。その輪郭には、離れ離れになって久しいあの顔が重なって見えた気がした。

「ウェンツェル、助けて――」

 そして彼女は、いまだ行方の知れない婚約者に向け、祈りのような言葉を投げかけた。

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