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ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 目玉焼きに醤油をかけ、レタスを抜いて箸でバリバリと食べたり、適当にマーガリンをつけてトーストを頬張るラークの姿を思い出し、ガルクは席に就かずにふいと顔を逸らして玄関へ向かった。
「どこへ行く?」
 フェイクの困惑の声に、ガルクは一瞬立ち止まったが、良い言葉が思いつかなかった。
 体ごと振り向けば、のぞき込むフェイクと離れた所から無表情で見ているラークの顔が見えた。
「悪い。今日は食欲ないんだ」
 己の感情と、二人の困惑の感情に、どういう名前を付ければ良いか分らないまま、ガルクはフェイクにそう言って外に出た。
「ガルク、どれ位で戻る?」
 アパートの階段を降り始めたガルクの背中に、フェイクはにこやかに言葉をかける。当時は何とも思わなかった彼の気遣いに、ガルクはため息に似た深呼吸をして胸の靄を吐き出して、振り向く。
「夜には戻る」
 ラークと少し距離を置く、と言葉裏に滲ませてガルクは精一杯の柔らかい表情で答える。わかったよと、フェイクは表情で答えて玄関を閉めた。それを見送り、胸の靄とそこはかとない重さにため息を吐き、階段を下りて外へ出る。
 外は創っていなかったので、何もない。道も、迎えのアパートも、ラークの好きな海も。
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