
ジェンダー・ギャップ革命
第1章 逆襲の女と家畜の男
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女尊男卑の風潮は、昨今、急速に強まった。
元は女達の権利や独立を訴えてきた有志の社会団体「清愛(きよめ)の輪」が政治的な実権を握り、今や地方議員の神倉えれんが、党首としてその理念を政治に紐づけたのが大きい。市民達はしかるべき社会の流れに何となく賛同して、順応していったのだ。
人間には、多人数に従いやすい習性がある。
女優位の思想が強まれば、当然、市民達は感化されるし、尊い女と卑しい男、両者が恋愛感情や婚姻関係に結ばれるのは不自然だという理屈も素直に納得する。
えれんの女尊男卑には、れっきとした根拠があった。
男達が主導権を握った結果、円満でも豊かでもない家庭が多くを占めたこと。
男達が中心に立ってきた結果、有能な女達が活躍の機会を後回しにされて、経営不審に陥った企業が少なくないこと。
男達が中心になってきた結果、社会は先進国の遅れをとり、治安や経済は暴落の一途を辿ったこと。
男達が牽引してきた結果、歴史は階級格差や争いが絶えなかったこと。…………
そして彼女は、女が優れた生き物である根拠も明示した。
女達は頭で動く分、力で解決は試みない。理論や理屈で地盤を固める性質を持つ。
女達はコミュニケーションを得手とする。争うなら、武器は言葉だ。
女達は理性の生き物だ。男達の厚顔、不遜に辛抱強く従ってきただけあって、向こう見ずな判断はしない。
女達の知恵を蓄える器は大きい。男に比べて筋力など劣る分、神に賢さを与えられたからだ。…………
