
ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
「可愛い真面目気取りならともかく、尻軽の満身創痍なんて、そそられもしない。見苦しいよ、ありあちゃん」
「はぁっ、はぁ……」
ビシィィィッッ…………
「ぎぃやあああっっ!!」
えみるがありあの乳首をつねった。
「男は同じ人間じゃない。話を聞く価値もない。分かった?」
ありあの乳房の先端を飾る褐色が、えみるの指の腹の下で皺を刻んで膨れていった。ゴムボールでも揉む具合にいじくって、彼女の爪が深く沈む。
後方でしづやと唇を重ねていた英真が、声を立てて笑った。
「えみるん、ありあちゃんは男しか愛せないんだよ?お兄ちゃんのことだって、別れるよう指示して、はい分かりました……なんて、切り替えられるはずないじゃない」
三人は、ありあを特殊で異常な性的倒錯者として位置づけた。
軽蔑、嫌悪、嘲笑、同情、好奇──…いずれにしても否定的な目が、ありあをじわじわ打ちのめしていく。
「私達は惹かれ合っただけ。女が男を愛しただけで、何故、異常だと言われなければいけないの?」
「貴女達だって、そうしてきた。昔の貴女達は、女を愛する女、男を愛する男、性別にしっくりこない人間に、今の私達と同じ目を向けてきた。その価値観が、ただひっくり返っただけ」
えみるの言葉はもっともだった。
時代や国が異なれば、常識は変わる。だからこそありあは赤ん坊の言葉をしゃべりたがる大の男や、顔を踏みつけられたいマゾヒストに出逢っても、彼らは彼らの正常に従っているものとして認識していた。特定の人間を非難しても、そこから何も得られない。
それでもえみる達にとって、ありあという一個人は重要ではない。彼女らと異なる性質であるために、きっと化け物だ。
