
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
高校に入って初めての冬、織葉は既に、えれんと母娘の一線を超えていた。元々スキンシップの多かった彼女の誘惑は自然と受け入れられたし、何より織葉は同情していた。
当時、彼女は重光の秘書でさえなかった。無給の家政婦のごとく家事全般に忙殺されて、彼の気まぐれ次第では、翌朝、泣き腫らした目を伏せて、彼と同じ寝室から出てきた。
…──私の親友は、周囲から男と一緒になることを催促されて、命を絶った。なのに私はお金欲しさに男と結婚して、ぬくぬく暮らしているわ。
舌で唇をこじ開けるような口づけを交わしていた途中、えれんは自身の過去を明かした。学生時分から続いていた仲良しグループは、彼女らが二十代を終える頃に一人欠けて、四人は生涯癒えない傷を共有する仲になった。
えれんにとって、織葉は拠りどころだった。四人の中でも特にか弱かった彼女は、同じ屋根の下に織葉を迎えていなければ、とっくに亡き親友と同じ旅に出ていただろうと言って笑った。笑っていたのに、その目は地に足のついた人間のもので、多感な年頃だった織葉には、それだけで心臓に悪かった。
