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ジェンダー・ギャップ革命

第7章 愛慾という桎梏



「……代わる」

「あの、織葉さ……」

「愛津ちゃんの代わりになる!滅茶苦茶言って悪いけど、罰は私が代わりに受ける……っ!」


 卵子の採取は、外傷が残らない。家畜も同然の男達に注入される咎人達の遺伝子は、管理もずさんだ。

 織葉には、愛津の自由を奪った罪の責任がある。


 えみるは、目に見えて動揺していた。大きな目を潤ませて、何か言いかけては口を閉じて、口を閉じては何か言いかけている。
 いくつかの言葉を飲み込んだ末、彼女が織葉を押し返した。震える手。業務中の姿勢を維持しているように見えた彼女は、初めから看守の顔など見せていなかったのかも知れない。


「もしバレたら、私は処罰されます」


 でも、と、顔をしかめたえみるの目に、織葉は心当たりがあった。

 数多の女達に垣間見てきた欲望だ。愛津にも、燃えるような熱を孕んで、それは宿っていたことがある。


「どうせ処罰されるなら、その前に、ズルいわがままを言わせて下さい」

「…………」

「抱いて、いただけますか」

「えみる、ちゃん……」

「失恋して、好きな人のために命の危険を冒すなんて、私の人生何だったのかって思うじゃないですか」…………


 やはり月村に会うべきだった。

 えみるの想いは、演説やビラ配りに織葉を追ってくる女達とは重みが違った。

 愛津以外を選べない。しかし目の前で俯くえみるは、織葉がつい抱き締めるほどにはいじらしい。

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