
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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頼りにしている。誇らしい。…………
えれんから、愛津は何度、そうした褒め言葉を浴びせられたか。
物質も、人と人との繋がりも、壊れる時は呆気ない。そしてどれだけ腕利きの職人も、それらを完全に修復出来ない。
昼下がりまで、愛津はえれんと話していた。今朝まで織葉と、事務所に向かう通勤時間までLINEしていた。
「愛津ちゃん、もう行くけど、大丈夫?」
月村が腰を上げた。
愛津が彼女と事務所を出た時、停車していたタクシーに、若松が乗っていたらしい。月村は、彼女が織葉からえれんを引き離すために待機していたのだと憶測した。母親の監視を逃れた織葉は、おそらく愛津の元へ向かう。そこまで想像した月村は、彼女を案内出来るよう、定時が過ぎても愛津の側にとどまっていた。
愛津が頷いたのに気付かなかったのか、月村が振り返ってきた。
今一度、彼女が愛津に目線を合わせた。
「表向き、業務妨害罪。詳しくは話せない……部外秘。神倉さんには、そう聞いている」
「はい」
「本当の理由、愛津ちゃんは知ってるの?」
「…………」
心当たりがあるだけだ。
「月村さんは、何で、織葉さんが来てくれるって思ったんですか」
「仲良いでしょ。付き合っているんじゃないかって、英真ちゃん達もしょっちゅう言っていたから」
「…………」
そこまで分かりやすかったのは、存外だ。
愛津かえれんか、織葉がどちらかを選ぶかなど明白だ。織葉にとって、所詮、愛津はその程度だったのに。
