
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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翌日、えみるはありあのいる独房を巡回した。
かつては、人気ソープ嬢の名を欲しいままにしていたと聞く。えみると同僚になったあとも、見る者の官能を刺激しないではおけない肉体、容姿を維持──…いや、日々更新していた彼女は、すっかりみすぼらしくなっていた。丹念に手入れされていた肌は、最近では英真達も不快を露骨に表すほどだ。
後ろ手に隠しきれていなかったろうバッグから、えみるは器具や薬品を出して並べた。
それらを見るや、ありあが血相を変えた。
無理もない。今、二人の間に並んでいるのは、卵子を摘出する時の他に出番のあった例がない。
「お願いして良い?」
「えみるん、これは正式な決定なの?!」
「ありあちゃんじゃないよ。ありあちゃんが、私のを採るの」
「……?」
無駄話出来るほどの間柄には戻れない。えみる達の間には、こうしている今でさえ、深い溝がある。
法や職務が二人をぎくしゃくさせたのであって、敵愾心まで持つまいと互いに抑えてきたところはあるが、えみるの今日の用件は、おそらく彼女の反感を買う。
