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終焉のアルファベット

第3章 忌避される才能

フィレンツェの市街の喧噪から隔絶したヴィンチェンツォの小さな工房の中、かつてない激烈な心の葛藤が彼を襲いました。逆風が吹き荒れる芸術界の中、自己の新しい視点を突き進める勇気と、一方で伝統と照らし合わせた時に感じる困惑との間で心は揺れ動きました。「これが本当に良いのだろうか?」とヴィンチェンツォはつぶやき、心の中で蠢く疑問と向き合いました。彼の心には創造性への情熱と自己への不安が交錯し、時に彼を迷走させました。だが、自身のインクから滴る力強い文字の曲線を見つめると、その中に新しい表現の可能性が宿っていることを彼は確信していました。「ヴィンチェンツォ、あなたの書体は文字そのものを蝕んでいる。あなたの書体が流行れば、私たちは文字の美学を喪うだろう!」と、時折開かれる市の論争の場で、保守派の一人、マリオが声を荒げました。その言葉は彼の心を直撃しましたが、ヴィンチェンツォは決してひるむことはありませんでした。「いいえ、私の文字は新たな美を追求しているだけです。文字が持つ可能性は無限です。私が求めるのはその一つの可能性を開くこと、何もかもが正反対に映る鏡のような世界を見せることなのです」と彼は静かに言い返しました。彼の声は確かで、その信念は揺るぎないものでした。

夜毎に彼の心を揺さぶる不安と闘いながら、ヴィンチェンツォは自己の芸術に対する情熱を研ぎ澄ませ、深夜の工房で創作を続けました。彼の筆は休むことなく紙に綴られ、自由な表現への道を切り開きました。文字を捻じ曲げるその独特なスタイルは、保守派からは反発を受けましたが、ヴィンチェンツォ自身にとっては新たな可能性を生み出す宝石のようなものでした。彼の芸術は信念と情熱に燃え、新たな表現の炎を燃やし続けました。

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