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終焉のアルファベット

第4章 闇の勢力

光と影が交錯する神聖な宮殿の一室、教皇ルシウス三世とその忠実な腹心たち、カルディナル・フェルナンド、古き友であり哲学者のセバスチャーノ、そして明晰な思考を持つ評議員ジュゼッペが揃っていました。目の前に広げられていたのは、ヴィンチェンツォ・ディアモンディの巧妙な書の作品で、彼らの目はその斬新さを異端とみなし、深く眉を寄せていました。

「見よ、この怪奇な字形、この曲がりくねった線。ヴィンチェンツォの筆は神の言葉を冒涜し、我々の道徳を蔑む」と教皇ルシウス三世は作品を指差しました。カルディナル・フェルナンドは深く息を吸い込んでから、「あながち間違いではない、敬愛するルシウス。彼の作品は我々の信仰と教えを踏みにじり、教皇庁の不変とされる規範を揺るがすものだ」と厳しい調子で同意しました。セバスチャーノは彼らの言葉に対して、自身の哲学的な視点を絡めて反応しました。

「しかし、その新たな表現は、言葉が持つ可能性を示しているのかもしれません。我々の理解を超える新たな視点は、それ自体が神聖なのかもしれません。」ジュゼッペはセバスチャーノの言葉に思索的な眼差しを向けつつ、一方で警戒心を忘れません。「それはそうかもしれない、セバスチャーノ。だが、ヴィンチェンツォの力は拡大し続けている。我々はその影響力の広がり方を警戒し、必要とあらば手を打つべきだろう。」

一室に響くのは皆の深呼吸と、思考を巡らせる頭脳の軋む音だけでした。それぞれが自身の疑問や恐怖、信念を内包したまま、誰かが新たな言葉を口にするのを待つ緊張感が、金色の壁面を這い上がり、天井を揺らしていました。

「だが、フェルナンド、彼の作品は邪教的であると決定づけるのは、早計ではないだろうか?」哲学者のセバスチャーノは頬を撫でながら問いました。ジュゼッペもまた、眉間に深い皺を寄せ、言葉を続けました。「セバスチャーノの言う通り。その表現は、新たな視点を提供するかもしれない。我々が一方的に彼の芸術を破壊すれば、一部の人々からは反発を買うことになる。」

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