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ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー

第4章 クレリア・ラーナー


「昼間に何人かの女性と言葉を交わしたのですが、みな夜の仕事をしながら昼間の仕事を探しているようでした
 ここでは生活そのものが苦難の道なのでしょうか?」


フィルは率直に尋ねた

シモンズが懇意にしていたベリンダという女性も昼の仕事に行くと言っていたし、トーマスの想い人のルイーズも先週から宇宙港の仕事を始めたと言っていた


「まぁ、軍事基地のコロニーに集まった街だしな、繁華街も多いし、元々は民生コロニーだったんだから人口はそもそも多かったんだ
 今でこそ激減しちゃったけど、名残りはあるさ!
 キミが元いたサイド7は比較的新しいコロニーだったろう?連邦軍とコロニー公社の管理下、新規の開発企業や作業員も増えているだろうから仕事はたくさんあるだろ?
 
 ここは仕事の取り合いだ
 あぶれた者は落ちていくいっぽうなんだ
 落伍者は次のチャンスが少ない
 落ちたら最期
 ドラッグ漬け、薬物中毒、スラム化した貧困街、基地のすぐ近くに現実離れした民衆が這いつくばっている

 キミが出会った人たちは必死で生き抜こうともがいてるのかもしれんな?

 ……て言うか、キミなんだか帰りが遅かったけど女のところにうろちょろしていたのか?
 呆れたやつだな」


「ち、違いますよッッ!? たまたま昼間にシモンズさんたちの小隊の方々と鉢合わせしたんです、そのときに民衆の方と話す機会があっただけです」


「シモーネ? じゃあ、おおかたベリンダあたりだろ? アイツ私に拒絶されてから男にも女にも飢えてるからな!相手してやってるのはベリンダくらいだろ?」


クレリアはワインを飲み干すと手をブラブラさせて食器を下げろとジェスチャーした


「過去に何かあったのかもしれませんが、そんなに悪い人には見えませんでした
 やさしく案内してくれましたし……」


「洗い物が終わったらマッサージな?
 やさしくされたのは保険だよ
 キミ、唾を付けられたのさ?」


そう言ってクレリアはけらけら笑い自分のベッドにゴロリと身を投げ出す


フィルは食器を下げて、小屋の裏手で洗い物をする

頭上を見上げるとスペースコロニーなのに空が真っ暗だった

“向こう側には街が無いんだろうか?”

新しい環境に慣れるのはまだまだ先のようだった


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