ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー
第4章 クレリア・ラーナー
「……ところで、フィル
キミの修行というか研修というか、
どこまで習得するつもり?
きっと以前に耐え難い事象があったんだろうけどさ? トラウマを持ってるとヤツら悪魔は絶対その部分を突いてくると思うよ?
その覚悟ある?」
クレリアはだんだん減ってきた鍋の中に人工ミートが残っていないか探りながら、新しい修道者となる少年に問いかけた
「……何度かアイツらと遭遇しました
ヤツらが出てくるたびに、ボクの身近な人の命を奪っていきます……
残ったボクが無念を晴らさないとッッ!」
フィルは視線を落とし、空になった皿を見つめながらつぶやく
「ヤツらは厄災だよ、人に仇なす災害だ
飢饉、津波、地震…、人々の苦しみがヤツらの喜びとなり、糧となる
キミのその抱えている苦しみが、そのままヤツらのパワーになるんだ、わかるかい?
キミはすでに弱点を抱えちゃってるんだよ
間違いなくヤツらはキミの親しい人の声を真似てくる
その姿で此処に出てくる
“フィル!助けてッッ!?”ってな?
まるで今まさに地獄の業火に焼かれているかのようにキミに助けを求めてくるよ
キミに耐えられるかな?」
そう言われるとフィルは何も言えない
目の前に幼馴染みのエレンが助けを求めてきたら?
心を通わせたシスター・リンダが目の前で苦しんでいたら?
フィルの苦しみを知ってか知らずか、クレリアは鍋に残された野菜をつまんでいく
「落ち込むことはない、フィル
それが普通だよ
キミの家族、キミの恋人があの世で苦しんでる姿なんて見せられた日にゃ、キミは正常では居られなくなる、
それが普通さ」
やさしく声をかけてやるが、フィルは言葉を返せなかった
「フィル、悪魔祓いは別に習得しなくても構わないさ、私の助手をしてくれるだけでも私は助かるからね
儀式をひとりで執り行うのは大変なんだよ
それだけ時間もかかってしまうし、
時間がかかってしまえば、それだけ私の集茶力も不安定になる
何度もヤツらを取り逃してきたよ
でも助けてくれるのなら一体や二体、封じ込められるかもしれない
そう、このコロニーにはたくさんの悪魔が集まってきている
一体や二体どころじゃないんだ
ロスト(廃棄)コロニーは
ロスト(失われた)人々の場所でもあるのさ」
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