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ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー

第4章 クレリア・ラーナー


3階のレストランの窓からの眺めでは遠すぎて人の群衆が車に群がっているところしか見えない


すると店のウェイターが無言でテーブルにゴトッと何かを置いていった


デジタル双眼鏡だ
それも2台

「あ、ありがと」


クレリアは素っ頓狂な声でお礼する

「フィル、キミの知り合いなのか?」

「此処に来たばかりのボクが知ってるわけないでしょう!?教会のミサに来てくれていたんじゃないですか?」


「うーん、覚えてないなぁ」


不思議名気持ちになりながらも彼の好意をありがたく受け取る

「うぉっ!こりゃ良く見えるぞ!?」

「すごっ!ズームも出来ますね」


アップで見るフィルだが内心おだやかではない


リンダとくちづけを交わしたあの最後の夜

アイツは空に浮かんだ黒い霧のなかから現れて、リンダを無残にも空中から落としたのだ


双眼鏡に映る姿は本当にただの男の子だ
10歳ぐらいだろうか
金持ちそうなスーツ姿の小さな男の子
顔は真っ白で、黒い髪
さすがに目の色まではわからない

SPたちに守られながら群衆は森の奥の方へ向かっていく


クレリアも双眼鏡を覗きながら声をかけてくる

「1年前のニュース知ってるかい?
 水や空気の資源のために時おり氷の小惑星をコロニー公社が確保してくるだろ?
 その岩の中から人間のカタチをした石像が出て来た、てやつ知ってるかい?
 サイド1にまで伝わっていたかな?

 あの前後から彼が祭り上げられている
 それも不思議なんだけど、彼自身が妙に落ち着いている様子でね、

はじめは周りからもてはやされているだけなのかと思っていたんだけど、どうやら彼自身が民衆を率いているようなんだよね

わたしも近付けないから詳しくはわからないんだけど……ん?

 もしかして、こっちを見てないか?

 あの距離から? 気づかれた?
 ヤバッ!?
 隠れて、フィル! 頭を落とすんだッ!」


クレリアが最後に見た男の子の姿、民衆の群れに囲まれながら森の奥へ移動していくとき、ふと彼は足を停めくるりと振り返ると一直線にこちら側、ビルの3階のほうを見据えてきたのだ


たまたま振り返ったわけじゃない

意志を持って凝視してきた

それがなぜなのか、ふたりにもわからなかった



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