一夜限りでは終わりたくない
第2章 曖昧な関係
カツカツカツ…とリズム良く鳴り響く足音。
ハイヒールの靴音だ。
その音の方へ何気なく振り返ると、女性が颯爽と歩いて来る。
その後ろを追いかける、秘書らしき男性の姿。
その女性は肩までのストレートボブに真っ赤な口紅。
美しいその顔には自信が満ち溢れている。
どうやらこの女性が新しく着任した専務のようだ。
皆のひそひそとした声でそれを知った。
だとしたら、この女性が里香が言っていた、翔也の彼女ではないのだろうか。
彼女は女性の私から見ても憧れるような女性。
翔也には確かにお似合いの女性だ。
心臓がなぜかトクトクと早く音を鳴らし、胸が苦しくなる。
この苦しさがなぜなのか自分でも分からなかった。