デリヘル物語
第2章 take2
「はっ?あんた何を未練がましく言ってんのさ。あたしは自分よりも若い男には興味はないんだよ。それにあたしは……」
「いっ、いでっ……お、起きました、かり……いや、あ、あけみさん」ようやくそこで田口が意識を取り戻した。
彼女はそれを見るなり胸ぐらを掴んだまま「だったら、早く案内しろや、客を」そう言ってそのまま横たわっていた田口を引っ張るように立ち上がった。
あけみさんにに引っ張られながら田口も完全に立ち上がると「あっ……はい、わかりました、かれ、あっちが……あけみさん」と言ってズボンのポケットからハンカチを取り出し、それを使ってすでに乾ききっている鼻の下の二本の血を拭き始めた。
「え、でっ、では、本日の高橋さんのコースは、60分の『お痴女様コース』で、一万とんで五千円になります」
「とんでねぇだろが、こら」と言って彼女が田口の鳩尾を今度は拳ではなく肘の先でこ突いた。
田口は大げさに痛がり「ぐはっ……」と言う声をあげた。
「そんなに強くやってねぇだろ、今のは……。それとも、もっと強くやって欲しかったのかよ」
「いえっ……大丈夫です」田口は大袈裟にびくつきながらあけみさんに言うと、次は僕の方を見て言った。「あの、高橋さん、クーポン券などお持ちではなかったですか?」
「い、いえ、ありません――」と僕は田口に答えてから「あっ、ちょっと待ってください」そう言って、ポケットから財布を取り出すとその中から一万円札と五千円札を抜き取りそれをすぐさま手渡した。「じゃあ、これで」
「ああ、はいっ」田口はお金を受け取るとそれを確かめ「確かに――一万五千円ちょうどいただきます」そう言って、肩から斜めにかけているショルダーバッグの中から黒い大きな財布?のようなものを取り出し、僕が渡した二枚のお札をその中にしまった。
「それでは高橋さんごゆっくりお楽しみください」田口は僕にそう言ってから「かれ……じゃなくて、あけみさん、よろしくお願いします」と彼女に向かって言った。
「ふんっ……この坊やなら、まぁ3分もあれば余裕ね――つか、それより田口ぃ、この前みたいに待たせんじゃねぇぞ。今度はまじで許さねぇからな」彼女はそう言いながら、再び田口を睨みつけた。