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デリヘル物語

第3章 take3



「雑誌!……って?」その奇妙な状況にはじめのうちは谷崎が何を言っているのかわからずにいた。でも、そんな状況下においても、決して簡単に忘れられる代物でもなかったんだ、あの本の内容は。だから、谷崎に聞かれてまもなく僕はピンときた。「ああっ、あのやばいやつ――っすよね、さっき谷崎さんがくれた……」


そして僕はその映像を完全に思い出すと目の前の男に憤りを感じ始めた。「って言うか、あれは何なんすか、いったい!」


「あ、やっぱりそうなる……よね」谷崎はそんな僕を見て笑顔で言った。「俺も、あのあとちょっと間違えたかな~、なんて反省してたんだ、実は」


「いやいや、ちょっとどころじゃないっすよ、あんなの、あれで喜ぶやつの気がしれないっすよ」


谷崎は後頭部を掻きながら言った。「そうだよな、やっぱり今の君にはまだ早かったよな、あれは……」それから思い出した様子で「でも、あっちは良かっただろ?」と僕に聞いてきた。


「あっちって……?」


「ほらっ、きみがドライヤーとか言ってたやつよ」


「ああ、あれ。いやいや、あれもなんなんのか全然わかん……んっ」


と、その時、ようやくこの今の状況がおかしい事を思い出したんだ。僕は瞬きする事を忘れて、谷崎に尋ねた。「……そんなことよりも、谷崎さん、なんでさっき僕と会ったこと覚えてるんですか?」


「あっ、そうだったな……」谷崎は再び何かを思い出した様子で言った。「俺とした事が……つい、きみと会えたのが嬉しくて『また』とか言ってしまったけど――そうだよな、本来なら初めて会った事になってるもんな、俺ときみは……」


そこまで話すと谷崎はまたしても後頭部のあたりを掻き始めて、それから今度は困った様子で何かを考え始めた。


「谷崎さん、何か知っているんですよね……」そんな彼に、僕は、急かすように尋ねた。「だったら、教えてくださいよ、なぜこんな事が起きているのか……」


でも、谷崎は、珍しく顔をしかめて両腕を組んだまま何かとてつもなく悩んでいる様子だった。だから、急かすのを諦めて僕は、彼の次の言葉を待ったんだ。


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