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デリヘル物語

第3章 take3



しばらくお互いに沈黙が続いたが、やがて谷崎が喋り始めた。「いや、まあ……なんていうか、この件に関しては、ちょっと事情が複雑でね。何を話すべきか、何から話すべきかを考えたらちょっと難しいんだよ、高橋くん……」そこまで話すと谷崎はまた言葉を詰まらせた。「ただ……」


「ただ……、なんなんすか?」僕は再び急かすように尋ねた。


谷崎は、僕に急かされて今度は口を開いた。「ただ、まあ……今回の場合はイレギュラーと言うか、そもそも俺はきみと出会うべきではなかったんだ」


「出会うべきではなかった、って……」僕はやはり谷崎の言葉を理解出来ずにいた。


「とは言え、俺の世界の方はほとんど影響はないだろうな。しかし、きみの方は、きみのこの世界の方はそうはいかないだろう、おそらくは……」


「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ谷崎さん。さっきからあなたが何を言っているのか僕には全然わからないんすけど……」


「ああ、すまない。まあ、簡単に言うとだな、俺ときみが出会った事できみの未来が大幅に変わってしまうかもしれない、て事なんだ――と言うか、もうすでに変わってきているかもしれないが……」


「な、なんでですか……未来が変わるって……」


あっ――。


僕は、その時、あの雑誌の内容によってうやむやにされてきた、それまでの数々の違和感を思い出した。そして、それと同時に、谷崎の言葉が初めて理解出来たんだ。


確かに変わってきている、色々な事が……。


「谷崎さん、でも、それが何かまずい事でもあるんですか?」僕はとっさに尋ねた。


「それは、まあ、まだなんとも言えないんだけれども……、ただ、それによって様々な事柄に影響を与えてしまうんだ。そして、一番の問題はそれらの変化をこちらの世界のこの宇宙の法則が許すかどうか、と言う話になってくるんだ」



「宇宙の法則……が許す」


またしても僕の耳に聞き慣れない言葉が飛び込んできて、僕は再び迷路の中に引きずり込まれたようだった。言ってみれば、それは、手マンとクンニを長い時間駆使して、ようやく『いかせた』にもかかわらず、まだ『いきたい』と言い出す女性のようなもの……だ? 


それはさておくとしても。結局のところ僕はまだ彼の話の一割すらも理解出来ていなかったんだ。



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