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デリヘル物語

第1章 初めてのおつかいならぬ初めてのデリヘル



「え?く、クーポン?そんなの、持ってないですよ、宅配ピザじゃあるまいし……」


「そうですか、わかりました。それでは本日のお会計は消費税込みで一万とんで五千円になります」


「とんでねぇし!」と無意識のうちに僕は言っていた。


「あ、ところで高橋さん」


「な、なんすか、今度は?」


「たった今、高橋さん、宅配ピザと言われましたが、正確にはピザではなくて、ピッツァ……」


「どうでも、いいわ、そんな事!」僕はこの男に対して感心すらも遥かに通り越して、もはや奇跡の産物だ、などと感動する……事はなかった。ただ単にキレただけだった。「ていうか、あんた、さっきからぜってーわざと言ってんだろ!」


「え、何がですか、高橋さん?」


「それだよ、それ!ひょっとしてあんたの鼓膜はびりびりに破れてんのかよ!」


僕の言葉に、反省するどころか、男は意外だと言わんばかりの表情を見せた。だから僕はよけいに腹が立ち男に対して一切の礼儀と呼べるものを捨てた。


「名前、言わないでくれって言ったでしょうが、さっき……!それに、こっちが黙って聞いてりゃ、人の苗字を『(笑)』みたいに乱発しやがって……それともなにか、あんたは高橋依存症なのかよ!」


「え――?あの、ちょっと何言ってるのか、わかりませんが、高橋さん」


「じゃかしいわい!」


「ぷっ……」


「なに吹いてんだよ!」


「だって、高橋さんさっきから下ネタばっかり言うから……」


「言ってねぇ!僕がいつ言ったんだよ、下ネタなんて!」


「え、だって、さっき、処女膜とかセックス依存症とか――もう、高橋さんも好きなんだから……」


「言ってねぇ、そんな事は――セックス依存症なんて一言も言ってねぇからな!」男の暴挙に僕はつい興奮して、少々呼吸が荒くなりつつあった。「はぁはぁはぁはぁ……」


すると男がそんな僕を見て心配そうに言った。「高橋さん、大丈夫ですか?プレイする前からそんなにはぁはぁしちゃって……」


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