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幽霊の悩み事

第1章 幽霊の悩み事

『待って、ごめん。私一緒に行けない』


 院内に入ると、なぜか相沢はるかはそう言って僕たちから離れた。


「いいのか、あの子を一人にして」

「うん。今の僕じゃ何もできないし」


 とりあえず僕と父さんは病室へと向かった。


「あ、榊原さん!」


 父さんの顔を見るなり、看護師さんが神妙な面持ちで駆け寄って来た。


「息子さんなんですが……」

「わかってます。しばらく病室には近寄らないでください」


 さすが、父さん。
 すでに何が起きてるのかわかっているようだ。


 病室の中は禍々しい空気で淀んでいた。ベッドのシーツはビリビリに破かれ、椅子や棚は倒され、点滴の液体が床にこぼれていた。



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