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幽霊の悩み事

第1章 幽霊の悩み事

 幽霊はどこにでもいる。生きている人間のように歩いている。


『ねえ、どうしてこんな時まで幽霊の相談に乗るわけ?』

「困ってる女性はほっとけないよ」


 実家に向かう途中、女性の幽霊たちと出会い、一人一人じっくり話を聞いているうちにすっかり夜になってしまった。


 とりあえず鳥居をくぐらずに、敷地内にある実家へと向かった。すると玄関の前に辿り着いたのと同時に、ガラガラと引き戸が開いた。


「久しぶりだな、樹」


 戸を開けたのは、ジャージ姿の父さんだった。相変わらず、チンピラみたいなツラをしている。


「父さん、僕……」

「まずはそちらの方たちに帰ってもらおうか」


 振り返ると、僕の後ろにずらっと女性の幽霊たちが一列に並んでいた。
 

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