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お題小説 labyrinth(心の迷宮)

第1章 ラビリンス(labyrinth)

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「ふうぅ……」
 わたしはそんな不惑な想いと昂ぶりを感じたままに、バスタオルを纏いベッドへと戻ると…

「あ……」
 あの男が、彼が起きていた。

「どうしたの?」
 そう聞いてくる彼の声に、そのなんてことない普通の男性としての声音にわたしの心が…
 なぜか震えてくるのだ。

 え、なんで?…

「あ…うん、な、なんかさ、変な夢を見ちゃって目が覚めちゃって…」

「そうなんだ…
 なんか寝落ちしたみたいだったから…」

「え、寝落ち?」

「うん、なんかさっきイッたままに、スゥっと寝落ちしたからさ、一瞬、焦ったんだよね」
 と、彼は恥ずかしい事を言ってくる。

「え、イッたらって…」
 今までイッた事さえほとんど無いし、そのまま寝落ちしたなんて事も無い…
 だからもの凄く恥ずかしく、思わず訊いてしまう。

「焦ったって?」
 
「う、うん、オレはさ、今までさ、相手をさ…
 あんなに感じさせた事なんてなかったからさ、だから驚いちゃって…」

「え、そ、そうなの?」

「うん、そう、逆に今まではヘタで速過ぎるって…」
 彼は恥ずかしそうに呟く。

「え、速過ぎるって?」

「うんそう…少しコンプレックス…」
 
 あ、もしかして彼もわたしと同じなのか?

「だからキミがあんなに感じてくれたのに驚いちゃって…
 そしてイッた感じの後に急に寝落ちしちゃったから…
 だからもしかして死んじゃったのかと思ってさぁ、一瞬、焦っちゃったんだ」
 と、苦笑いしながらそう言ってきた。
 
「あ…死んじゃったなんて…バカねそんなわけないじゃん…」
 わたしも恥ずかしさを超えての苦笑いをしてしまう。

「で、でもね、わたしね…凄く感じたの…」
 思わずそんな本音を呟いた…
 しかし内心は、そんな事を言っている自分自身に驚いてもいたのだ。

 だけど、そんな話しをしている間も、わたしの昂ぶりの疼きはますます増してきていて…

「えっ、じ、実はオレも…凄く感じちゃったんだ…
 そ、それになんかさ、いつもよりは少しだけ長持ちしたみたいでさぁ…」
 彼もそう言ってきて…

「ね、ねぇ」
 そして手を伸ばしてわたしを呼ぶ。

「えっ?」

 ドキドキ…
 ウズウズ…
 そんな彼の手招きに、わたしの心とカラダの昂ぶりが急に強く疼いてきた。

 そして…
「さあ、ほら、早くこっちに…」
 

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