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王都崩落

第1章 1

「幼少期、全般的な世話をして貰った親みたいな存在を、部下に丸投げして殺させる……

ㅤおむつを変えてもらって、お風呂にも入れてくれた存在を、自分で手を汚す価値もないって思っちゃったんだね。

ㅤ育ての親をゴミみたいに扱っちゃって」

「​───────黙れ」

ㅤ赤い瞳が動く。
ㅤ何時の間にやら其の場に現れていた、銀の髪をした醜悪な悪魔は、私に向けて其の作り物じみた麗しい顔を歪める。

「​───────君らの方が、余程悪魔じみた行為をしている。
ㅤ見ていて滑稽だ」

「……」

ㅤ顔が歪んだ。
ㅤ告げられる悪魔の言葉に何も言えず、握った拳が震えた。胸に植え付けられた契約印が疼いた。

「……知っている、そんなことは……」
「​───────。
ㅤあーあ、泣かせちゃった。ごめんね大尉、少し言い過ぎたかも」
「……」

ㅤ投げ捨てるように吸っていた煙草を捨てた。
ㅤ其れは色褪せたカーテンに当たり、そのまま火種となる。

ㅤぱちぱちと爆ぜ始める其れを見て、悪魔は燥ぐ様な嗤い声を上げ、翼を拡げた。

「じゃあ帰りますか、大尉。こんな所からはさっさと退散しよう。血腥いったらありゃしない」
「……そうだな」
ㅤ服を着ながら、彼の後につき屋敷を後にした。後に残ったのは燃えカスと死体だけだった。

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